モヤモヤの日々

第83回 赤子はすごい

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

赤子(11か月の息子)の成長が目まぐるしい。少し前までは出来なかったことが、どんどんできるようになってきた。つかまり立ちで、家の中を移動しまくる。親の物真似をする。音楽に合わせて体を揺らす。生後3か月くらいから一緒にいる犬のぬいぐるみも、最初は存在に気づかないか、ぶんぶん振り回しているかだったものの、最近では愛しそうに抱きしめたり、眠る前に近くに引き寄せたりしている。昨日は、ついに「ばぶばぶ」と言い始めた。まるで赤子のようではないか。

今朝、寝転がっていたら赤子が僕の体によじ登ってきた。首の付け根のあたりに座り、足を両肩に固定してマウントポジションを取ると、けたけたと笑いながら僕の顔を何度も何度も殴り続けた。僕は「やめてくれ〜」と叫んだ。すぐに起き上がって赤子を抱きしめ、高い高いをして遊んであげると、赤子はけたけたと笑って喜んでいた。妻も、「◯◯君は、パパが好きだねえ」と微笑んでいた。ほのぼのとした、穏やかな空気が流れていた。相手が赤子でなければ、凶悪事件である。赤子はすごい。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid