第10回 ブレグジットは撤回できるのか──ゾンビ政権と国家のクライシス

イギリスがEU離脱を決め、アメリカではトランプ大統領が誕生。今年、フランス大統領選、ドイツ連邦議会選など重要な選挙が行われる欧州では、「さらにヤバいことが起きる」との予測がまことしやかに囁かれる。はたして分断はより深刻化し、格差はさらに広がるのか? 勢力を拡大する右派に対し「レフト」の再生はあるのか? 在英歴20年、グラスルーツのパンク保育士が、EU離脱のプロセスが進むイギリス国内の状況を中心に、ヨーロッパの政治状況を地べたの視点からレポートする連載、その第10回。メイ政権がジリ貧になり、ブレクジット撤回の動きも活発化してきている英国。はたしてEUとの離脱交渉の行方は? 民意で決めたことは、民意でしか変えることはできない。「国民投票」も現実味を帯びてきている日本に向けた、貴重なレポート。

いよいよジリ貧のメイ政権

不用意なことは口にしないエレガントな穏健派だったはずの英国のハモンド財務相が、テレビの政治番組に出演して「英国には失業者はいない」と発言して物議をかもしている

「じゃあ英国内の142万人の失業者たちはいったい何?」「一般の認識とあまりにも乖離した政治家の世迷言」とまたもや炎上したのは言うまでもないが、一年前は政治家の失言で炎上といえば労働党と相場は決まっていたのに、もはや完全に潮目が変わった感じである。

保守党の現政権はもはや「ゾンビ政府」とさえ呼ばれている。国防相がセクハラで辞任したり、国際開発相が政府に無断でイスラエル首相と会談していたことが明らかになって辞任したり、それでなくとも人気がないうえに大臣たちの不祥事が相次ぎ、党内が揺れている。ジェレミー・コービンの労働党に取って代わられるという「恐怖感」のためにようやく党の分裂を防いでいる状態だ、とオーウェン・ジョーンズも書いている。

まあしかし、彼も指摘しているとおり、メイ政権をジリ貧にさせているのは、大臣の不祥事やメイ首相の冷たい印象のパーソナリティーのせいだけではない。サッチャー以降の保守党の新自由主義、小さな政府のイデオロギー(そしてブレア以降の労働党のイデオロギー)がもう息も絶え絶えになっているのだ。

それを終わらすために労働党にはコービンが出てきた。だが、保守党には「緊縮をやめよう」と言う指導者が出てきていない。出てきたら保守党の歴史を変えるリーダーになるだろうが。

この隙を狙ってEU離脱撤回?

メイ政権がジリ貧になっている今こそ、とEU離脱撤回を訴える陣営も活気づいている。12月5日には、「Exit From Brexit Dinner」なるイベントが開かれ、会費200ポンドで参加でき、ロンドンの5つ星レストランでディナーを食べながら(こういうことをやるから残留派はネオリベと言われるのだろうが)EU離脱を阻止する方策を話し合う催しなのだという。

同イベントでスピーチを行うニック・クレッグ元副首相は自由民主党の元党首であり、もとを正せば、2010年の総選挙でハングパーラメントになったとき、両党のマニフェストを読めば絶対にあり得ないと言われた保守党との連立でキャメロン政権を誕生させた張本人である。そこから緊縮財政やそれに続くEU離脱の国民投票に繋がったのだと思えば、こうなったことの元凶とも言える人だ。

その責任を感じているのかどうかは不明だが、先月末、彼は保守党のベテラン議員ケン・クラークや元労働党議員のアンドリュー・アドニスを伴って、EU側のブレグジット交渉の首席交渉官ミシェル・バルニエに会いに行っている

「EU官僚たちに会ってはっきりしたことは、彼らは是が非でも英国に残留してほしいと思っていることです。EUは英国なしのほうがうまく行くなどと考えている人には一人も会いませんでした」とガーディアン紙にアドニスが話している。

世論はどうなっているのか

YouGovの調査によれば、「ブレグジットに投票した英国は正しかったと思うか、間違っていたと思うか」の回答の差はこれまで1%か2%の差で拮抗し続けたのだが、ここに来て初めて「間違っていた」が47%になり、「正しかった」の42%に5%の差を付けた。

しかし、ここがどうにも矛盾しているところだが、これからブレグジットが進むべき方向の調査になると、40%がメイ政権の強硬離脱路線を支持しており、ソフト・ブレグジットの支持者は12%に過ぎない。また、ブレグジットはやめるべきと思っている人は14%しかおらず、国民投票のやり直しを求める人も18%だ。

これを総合すると、英国の人々は、ブレグジットを決めたのは間違っていたかもしれないが、いつまでもぐずぐず揉めていないでさっさと先に進んでほしいと思っているということになる。

残留派の労働党議員、キャロライン・フリントも、自分の選挙区の人々と話した感触について、「残留派、離脱派の両方の人々と話してしばしば受ける印象は、『つまらないことで言い争ってないで進行してくれ』という感じです」と語っている。

また、昨年の国民投票の前、EU懐疑派のジェレミー・コービンを熱心に説得して残留支持のスタンスを取らせたと言われているギリシャの元財務相ヤニス・ヴァルファキスも、「国民投票のやり直しを通してブレグジットを撤回するのは、リスボン条約の批准でEUがアイルランドにさせたことを英国の人々にもさせるようなものだ。それは、正しい答えが得られるまで何度も同じ質問を繰り返すことだ」と発言している。

労働党はどうなっているのか

興味深いことに、EU離脱の国民投票の前のメイ首相とコービン労働党党首のスタンスは似ていた。彼らはどちらも「消極的な残留派」だった。

もともと移民や難民の受け入れには消極的な立場だったメイ首相は、残留派のキャメロン元首相が辞任して自分が権力を手にした途端に強硬離脱派に鞍替えした。

ゴリゴリの反緊縮派でEU懐疑派として知られていた伝説の労働党左派議員、故トニー・ベンの直系の弟子であるコービンも、1983年に議員になって以来、EU法に関する重要な採決ではほとんど反対票ばかり投じてきたし、英国で社会主義を実現するためには単一市場は障害になると発言したこともあった。彼の盟友であり、影の財務相であるジョン・マクドネルも同じイデオロギーを持っている。それに、コービン本人が国民投票の結果を政府や議会が裏返すことはデモクラシーに反すると一貫して明言してきた。

コービンの側近の一人はこう語ったという。

「我々の基本的な分析はこうです。政治や経済界のエリートが、国をないがしろにしてきたことが、反乱を起こしたい気分や、英国のエスタブリッシュメントに関するシニシズムに繋がった。それは過去に労働党というブランドに大きなダメージも与えてきました。だからこそ、ブレグジットのような決断について、有権者よりも我々のほうがよくわかっていると言いたげな印象を与えてしまったら、我々にとっては非常にやりづらいのです」(New Statesman.com)

コービンも10月にEU側の首席交渉官バルニエに会っている。そこでEU側は、コービンは単一市場にも関税同盟にも留まるソフト・ブレグジットの方向で考えているというポジティブな印象を受けたそうだ。彼の後にバルニエに会ったニック・クレッグの一行も、EU官僚たちにも議員たちにもコービンはたいへん良い印象を与えていたと証言している。

止められるのは一般の人々だけ

保守党の中にも残留派は存在し、彼らもブレグジット撤回を求めてはいるが、大っぴらにそれを主張できないのは、党内が不安定でメイ政権の弱体化が叫ばれる中でそんなことを言い出したら党内分裂を招き、コービン労働党の支持率を上げるだけだからだ。 

現在、残留派が求めてるのは、ブレグジット交渉の最終的合意内容についての議会承認の投票であり、労働党はメイ首相が言っているような「ノー・ディール」(合意なし)での離脱には反対票を投じると警告している。もし2018年の秋にこの投票が行われることになり、そこで議会がブレグジットを阻止すれば、「明らかにそれは国家の危機を意味する。メイ首相はサバイバルするのが非常に難しくなるだろう」とニック・クレッグは語っている。

そうなると再びの国民投票の可能性も浮上してくるという。

またあの分断とデマと騙し合いの呪わしい狂乱の日々が戻ってくるのだろうか。

保守党の残留派議員アナ・ソーブリーはこう言っている。

「ブレグジットを阻止することができるのは一般の人々だけです。きわめて重要なことは、もしもそれが起こるとすれば、それはボトムアップのやり方で起こらなくてはいけないということです。トップダウンではダメなのです」(New Statesman.com)

一度ボトムアップで決めさせたことは、国民が心変わりするまでは変えられない。

国民投票を行う可能性のあるすべての国がこのことを肝に銘じておくべきである。

 

 

Profile

1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。保育士、ライター。著書に『労働者階級の反乱──地べたから見た英国EU離脱』(光文社新書)、『花の命はノー・フューチャー』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)
、『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)、『THIS IS JAPAN──英国保育士が見た日本』(太田出版)、『ヨーロッパ・コーリング──地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)など。『子どもたちの階級闘争』で第16回 新潮ドキュメント賞受賞。

第9回 カタルーニャ問題と2008年の亡霊

イギリスがEU離脱を決め、アメリカではトランプ大統領が誕生。今年、フランス大統領選、ドイツ連邦議会選など重要な選挙が行われる欧州では、「さらにヤバいことが起きる」との予測がまことしやかに囁かれる。はたして分断はより深刻化し、格差はさらに広がるのか? 勢力を拡大する右派に対し「レフト」の再生はあるのか? 在英歴20年、グラスルーツのパンク保育士が、EU離脱のプロセスが進むイギリス国内の状況を中心に、ヨーロッパの政治状況を地べたの視点からレポートする連載、その第9回。独立宣言で揺れるカタルーニャ。真向から対立するスペイン首相とカタルーニャ州首相の「舌戦」はともかく、地べたの人々はどう考えているのか。カタルーニャ現地の生の声を聞くと、そこにはやはり不況・緊縮財政への怒りの声があった。

「2017年は、政治がようやく2008年の金融危機に追いついた年かもしれない」

というのは、英国労働党党首ジェレミー・コービンが今年9月に行われた党大会でのスピーチで派手に放った「決めゼリフ」だった。

保守党政権は、2008年の金融危機が残したものと正面から向き合わず、「不況はブレアから始まった前労働党政権の「使い過ぎ」のせい」と主張して、2010年に政権を奪回した。そして戦後最大規模の緊縮財政に着手し、財政支出を片っ端から大幅削減したために、英国をフードバンクと子どもの貧困とゼロ時間雇用契約の国にしてしまった。

だが、労働党はようやく正しいやり方(=反緊縮)で2008年の金融危機が残したものと向き合うとコービンは主張した。この「決めゼリフ」は、今年6月の総選挙での労働党の躍進を見ても、国民が反緊縮政策を支持しているのは明らかだという自信に基づいていた。

政治への不信

2008年の金融危機の後で、もっとも経済的に混乱した欧州国の一つがスペインだった。若年層の半分が失業し、不動産バブルがはじけて多くの家族が住む家を失い、人々の怒りは頂点に達した。2011年にはオキュパイ運動の先駆けと言われたM15運動が起こり、バルセロナを含む複数の地域で既成政党に絶望し、選挙を拒否した人々が広場を占拠した。

「カタルーニャの若者たちの政治不信は根深い」と、バルセロナ在住の姪っ子の恋人は言った。彼も6年前にバルセロナの広場に集った若者たちの一人だった。生活水準の停滞、失業、公共サービスの削減。機能不全の政治に「怒れる人々(インディグナドス)」の運動の中から、ポデモスが生まれた。

ポデモスは、カタルーニャの独立(※英文記事ではカタルーニャの場合はINDEPENDENCE(独立)ではなく、SECESSION(分離)という表現が使われている。スコットランドは「独立」だった)についてはどう言っているのだろう。

「分離派たちは『腐ったスペインの政治システムから飛び出せ』と言って分離を求めているけど、ポデモスは『その腐ったシステム自体を変えよう』という立場」

と姪っ子の恋人は言った。

どこかで聞いた言葉だと思った。EU離脱もそうだった。「腐ったEUの政治システムから飛び出せ」という離脱派と、「EUに残って、その腐ったシステム自体を変えよう」と主張したコービンやヤニス・ヴァルファキスらの反緊縮派。

けれども腐った中央のシステムを変えるのは、言うまでもなく大仕事だ。時間もかかるし、そんなにばーんと革命みたいに一朝一夕に政治や社会が変わるわけでもない。

「みんな、もう待てなくなってるんだろうな」

カタルーニャ「分離」には反対の立場を取っている姪っ子の恋人は言った。

離脱はそんなに簡単じゃない

カタルーニャ「分離」とスコットランド「独立」の問題が大きく異なる点は、スコットランドの独立投票は英国の中央政府が認めた合法の投票だったが、カタルーニャは合法ではないということだ。スコットランドの独立投票時と違って、カタルーニャでは警官隊が暴力的に住民投票を阻止しようとしたり(この痛ましい映像や写真の数々は、「スペインの民主主義の終わり」とも表現された)、中央政府が自治権を取り上げると言い出したりしているのも、その違いが背景にあるし、そもそも中央政府が投票自体を認めていないことが、この問題の核にあると言ってもいい。

スペインのラホイ首相とカタルーニャのプチデモン州首相の対立は、英国でも大手メディアで連日報道されているのだが、わたしはお上対お上の対決よりも、一般の人々がどう考えているのかを知りたかった。

「みんな長い間、独立は簡単にできると思ってたんだよね」

と言ったのは、姪っ子の大家のおばちゃんだった。

「スペインから離れれば、デンマークみたいな社会保障国が作れるんだと思ってた。あくせく働いて苦労しなくても、もっと自由な時間が持てて、お互いがお互いを助け合う、今とは違う社会が作れるんだって。それなのに、そもそも独立すること自体がこんなに複雑で大変だなんて、前の州首相は言ってなかったよ」

これもどこかで聞いたようなセリフだ。「そもそもEU離脱すること自体がそんなに複雑で大変だなんて、離脱派の指導者は言ってなかったよ」と言った人は、英国にもたくさんいた。

今年8月に乗用車が暴走し、16人が死亡、百人以上が負傷したテロ攻撃が起きたランブラス通りで食事していると、ウェイターの中年男性が言っていた。

「テロの次は、デモと警官隊の衝突。ヘリは頭上を飛んでるし、商売にならない。ようやく不況を抜けるかと思っていたらこの有様だ。いい加減にしてほしい」

バルセロナはいつ来ても、陽気で、気さくで、旅行者にやさしい街だったのに、観光客の数も減っている。興味深いことに、8月のテロ攻撃の後はほとんどバルセロナを訪れる観光客の数には変化がなかったのに、10月1日の独立住民投票の後の2週間で観光客が15%減少しているらしい

テロ事件より、住民投票のときの警察による暴力のほうが世界の人々の目には恐怖に映ったということだろう。

やっぱり経済なのか、ここも

ピカソ美術館の近くのバーで話したバーテンダーのお兄ちゃんはスペイン語が流暢だったが、ルーマニアからの移民だった。独立問題はどうなってんのよ、みたいなことを話しかけると、これまた流暢な英語で答えてくれた。

「理由はなんだかんだ言っても、経済だ。言語とか、抑圧の歴史とか言うけど、カタルーニャはスペインの他の地域と比べてすごくリッチなんだから、搾取された植民地が独立する、みたいなことは言えない。ここは裕福で雇用があるから、僕たち移民もバルセロナに来て住んでるんだし。要するに、僕たちがこんなに一生懸命働いて、スペイン全土の人々の面倒を見なきゃいけないのはフェアじゃないと、そういうことだよ。それはその通りだろう?」

「なるほど…。独立の動機は、つまり経済だと」

「うん。だから、ブレグジットのようなレイシズムとは違う」

と彼が言ったものだから、それを脇で聞いていたわたしの配偶者が密かに衝撃を受けたようで、

「おい、あの青年、ブレグジットはレイシズムって言い切った?」

と後でわたしに聞くので

「うん。だいたい海外の人たちはそう思ってるよ」

と答えるとまたダブルに衝撃を受けていた。

「『裕福な地域に住む自分たちの稼ぎを、貧しい地域の人々のために使われたくない』って言う人に、ブレグジットはレイシズムだと批判されるのは複雑な気持ち」

と配偶者が言うと、姪っ子の恋人が笑いながら言った。

「経済への不満がカタルーニャでも原動力になっているのは、確かにそうかなと思う。でも、自分たちは裕福だから、スペインの他の地域に足を引っ張られたくないっていうのは、むしろ僕たちより上の世代の考え方で、若者はそれよりも、不況と緊縮でこれだけ先の展望の持てない状況なのに、中央政府はまるで茶番だし、そのくせ抑圧的だし、ってとにかく怒っているんだと思う。で、警官が暴力的な態度を取ると、よけいにその怒りがエスカレートして戦闘的になっていく」

とにかく怒っている人たち。これもどこかの国民投票の前に大勢見たな、と思う。

なんかもう、欧州全土がインディグナドスになっちゃってるのだろうか。

ゴーストと怒れる人々

2008年の金融危機は、ギリシャのシリザや英国のコービン、米国のバーニー・サンダースらの新左派を盛り上げる力になった。それはドナルド・トランプや英国のUKIP、フランスの国民戦線やオーストリアの極右勢力などの排外的右派勢力を台頭させる力にもなった。それは明らかにブレグジットの国民投票の結果にも重大な影響をもたらした。だが、2008年の金融危機はまた、疑う余地もなく、スコットランドやカタルーニャの市民ナショナリズムを生んだ触媒にもなっている。(theguardian.com

このオーウェン・ジョーンズの説が正しければ、欧州でとにかく怒っている人たちは、抑圧の歴史とか移民・難民の時代とかというより、実は経済的理由で怒っているということになる。「貴様らが俺らの生活を楽にできないのなら、俺らが自分でやるよ。俺らに主権をくれ」と人々が中央政府(欧州の場合はEU)からの分離・独立・離脱を訴え始めたとすれば、どうして欧州全土がこれほど揺れているのか説明はつきやすい。

「2017年は、政治がようやく2008年の金融危機に追いついた年」とコービンは言ったが、英国にしたっていくら英国労働党が選挙で議席を増やしたといえ、保守党が政権を維持し、緊縮財政を進めているのだから、政治はまだ2008年の金融危機に追いついていない。

もうすぐ10年になるのに、2008年が残したゴーストは消えるどころか、様々の問題の肥料になっている。

欧州が2008年の金融危機に正しい方法で対処しなかったツケ、つまり、病と呼ばれるほど執拗で集団懲罰的な緊縮財政で対処してきたツケが、厄介なゴーストの正体ではなかろうか。

 

Profile

1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。保育士、ライター。著書に『労働者階級の反乱──地べたから見た英国EU離脱』(光文社新書)、『花の命はノー・フューチャー』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)
、『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)、『THIS IS JAPAN──英国保育士が見た日本』(太田出版)、『ヨーロッパ・コーリング──地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)など。『子どもたちの階級闘争』で第16回 新潮ドキュメント賞受賞。