モヤモヤの日々

第229回 今日は何の日

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

今日は11月の最終日である。僕にとっては、というか読者のみなさんにとっても、2021年11月30日であるはずだ。11月は語呂合わせによる「○○の日」が多く、「いい夫婦の日」(11月22日)や「いい肉の日」(11月29日)がある。11月30日は「いい本みりんの日」の日なのだという。本みりんには申し訳ないが、これはちょっと語呂合わせとしてピンとこない。

巨視的な視点で考えれば、どんな日も何かが起こった日である。何らかの歴史的な出来事が過去に起こった日であり、そういう事実を調べるのは面白い。11月30日を調べてみると、1814年の今日はフランツ・シューベルトがゲーテの詩による「羊飼いの嘆きの歌」を作曲したり、1872年には、史上初のサッカー公式国際試合(イングランド対スコットランド)が行われたりしている。1977年にはアメリカ空軍基地として使われていた「立川基地」(東京都立川市など)が全面返還されたそうだ。僕が生まれる約5年前の出来事だが、近隣の東京都福生市で生まれ育ったので、前述のものより身近に感じる。福生には、今も「米軍横田基地」がある。

子どもの頃、歴史的な有名人が生まれた日を掲載した本を読んだことがある。残念ながらその本は手元にない。しかし、子ども心をわし摑みするような、子どもでもわかりやすい有名人や偉人が載っていなかったことを覚えている。そんな話を今朝、妻としていたのだが、妻はなんと、ベーブ・ルース、ボブ・マーリー、アンパンマンと同じ誕生日(2月6日)であるという。

これはとんでもない歴史の悪戯である。なんということだろうか。ベーブ・ルースとボブ・マーリーとアンパンマン。おおよそ考え得る組み合わせとして、こんなに完璧なものはない。フィクションとしても、ここまで最高の組み合わせを思い付くことはできないと感じるくらい出来過ぎている。ましてやAI(人工知能)なんぞには、この絶妙なニュアンスの組み合わせは絶対に導き出せないだろう。僕はとんでもない人物と結婚していたのである。ベーブ・ルースとボブ・マーリーとアンパンマンと妻。

悔しくなり、僕はあらためて自分の誕生日である3月16日を調べてみた。すると、フィギュアスケート選手の髙橋大輔さんが同じ誕生日だと判明した。これはうれしい。しかし、髙橋さんは1986年生まれで、僕より4つ歳下である。だから、僕が髙橋さんと同じというよりは、髙橋さんが僕と同じだと言ったほうが正確かもしれない。これからも髙橋さんを応援したいと思う。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid

モヤモヤの日々

第228回 本の片付けについて(3)

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

もうすぐ11月が終わる。師走が訪れる。大掃除の季節である。そして、僕の部屋は本で溢れかえっている。一度は片付けたつもりだったのだが、大掃除とは関係なく整理しなければならない。

この連載でもたびたび書いているとおり、蔵書の整理にはいつも頭を悩ませている。本棚を増やすスペースがなく、床に積むスタイルもすぐ崩壊するため僕はカラーボックスを購入し、種類ごとに分類して収納することにした。その数42個。素晴らしいアイディアだったものの、今度はカラーボックスで足の踏み場がなくなり、次はコンテナボックスでの収納を試みたのであった。

これで少なくとも一時期は部屋が汚れることはなかった。何度か地震があったけど、僕と違って強固なボディのコンテナボックスはそれにも耐えた。ところが、それからさらに蔵書が増え、コンテナボックスの上に本を積むスタイルになってしまった。かくして今、部屋が超絶に汚いのだ。

もはや日常となったリモートでの打ち合わせや取材は、背景をぼかすという最先端のテクニックを身につけることによって乗り越えていた。しかし、もう限界である。コンテナボックスの上に積んだ本が崩壊し、足の踏み場がなくなっている。新しく購入した本や、献本いただいた本を見つけるのにも一苦労だ。僕は意を決してコンテナボックスを2個、追加で注文した。合計9個。

費用はかかってしまうが、こんなことなら潔くトランクルームを外に借りればよかった。もはや部屋自体がトランクルームとなってしまった。僕はトランクルームで仕事をしている。追加購入した2個のコンテナボックスは、段ボールの箱を開けないまま、1か月以上も僕の部屋にのさばっていた。ついに重い腰を上げ、あらためて本格的に蔵書を整理し始めたのが昨日のことである。

とくに増えたのが、詩歌についての蔵書である。「詩歌(日本、海外を問わない)」というジャンルをつくって収納していたものを、「詩歌(日本)」「詩歌(海外)」とふたつに分類し直す必要があった。中原中也のことをもっと知ろうと、2012年に山口県の中原中也記念館で開催された特別展の図録まで取り寄せてしまったのだ。なんなら中原中也だけでもボックスを1個使ってしまいそうで恐ろしい。

まだまだ「本の片付け」は途上である。今週中にはなんとか終わらせたいと思っている。しかし、また腰を痛めてしまえば、日常が停滞してしまうので塩梅がむずかしい。唯一の慰めは、今回も「駄目貯金」(鞄やポケットなどの中から掘り起こされる小銭)が快調に増えたことであろうか。なぜか500円硬貨が多く、すでに3000円以上は貯まった。駄目さはいつも僕を窮地から救ってくれる。6000円を目指したい。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid