第3回 粉房琉璃街の子供と看板

今年1月に刊行された『老北京の胡同――開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』は、朝日新聞、週刊文春、信濃毎日新聞、聖教新聞など、各紙誌で大きく取り上げられている。

多田さんの15年間の取材と観察の集大成であるが、本書収録の写真(多田さんのお連れ合いの張さん撮影)も、胡同の魅力と大きな変化を伝えてくれる。張さん自身も胡同育ち。胡同とそこで暮らす人々を特別の思いとあたたかいまなざしで写し取っている。今回は、紙幅の都合で載せられなかったさまざま写真をご紹介する。

  ③粉房琉璃街の子供と看板

ありし日の粉房琉璃街。日中の街の風景を比べた時に、しばしば感じるのは、日本の方が、「手描き」の看板や広告をよく見かけること。でも、胡同はちょっと違う。活字の整然とした文字も、個性を競っていて面白いけれど、ウルトラマイペースな「手描き」文字も、いいアクセントになっている。店がどんな商売をしているかなんて、みんな承知済み。だから、気取る必要なんてない。そんな空気の中では、行き交う人も、ちょっとリラックスするみたいだ。