第2回 好景胡同の壁

今年1月に刊行された『老北京の胡同――開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』は、朝日新聞、週刊文春、信濃毎日新聞、聖教新聞など、各紙誌で大きく取り上げられている。

多田さんの15年間の取材と観察の集大成であるが、本書収録の写真(多田さんのお連れ合いの張さん撮影)も、胡同の魅力と大きな変化を伝えてくれる。張さん自身も胡同育ち。胡同とそこで暮らす人々を特別の思いとあたたかいまなざしで写し取っている。今回は、紙幅の都合で載せられなかったさまざま写真をご紹介する。

  ②好景胡同の壁

胡同の壁には表情がある。 比較的新しい時期に重ねられた赤レンガ。 清朝以前に使われた灰色レンガ。 時には、昔の城壁から運ばれた可能性の高い、どっしりとして大きな城壁レンガに出会うこともある。 それらが奏でる複雑なハーモニーは、胡同を流れてきた時間の厚みの表れ。 ボロボロでどうしようもない壁も少なくないけれど、ペンキの厚化粧が施された壁より、ずっと心動かされるのは、なぜなんだろう。