モヤモヤの日々

第74回 スマホの充電ケーブルが溜まる件

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

部屋を掃除していると、いろいろと気が付く。乾電池のストックが家にあるかわからず追加で買ってしまい、また使用済みかそうでないかの区別がつかず捨て難いという理由から、「乾電池がやたらと家にある現象」が頻発していることは、以前この連載で書いた。そして、もうひとつ家にいくつも溜まってしまうものとして、スマートフォンの電源ケーブルがある。古い型のものも含めると、計9つの電源ケーブルが我が家から見つかった。異常である。

僕も妻もiPhoneをつかっている。まず最近のiPhoneはケーブルの種類が変わった。昔のものは使えないため捨てる必要がある。そもそも、なぜこんなに充電ケーブルが溜まるのかというと、Apple社が正式に発売する純正品のケーブルが、まずよくなくなる。探したり、新たに購入したりすればいいのだけど、とりあえず目の前のiPhoneを充電しなければならない問題を解決するために、コンビニや百円均一でiPhoneに「対応」していると謳われている充電ケーブルを買う。しばらくは使えるのだが、数週間か数ヶ月後には使えなくなる。

端的にいえば、これを何度も繰り返しているから充電ケーブルが溜まる。純正品ではないケーブルは、なぜか初めは使えるのだけど、ある日、突然充電できなくなる。「このアクセサリは使用できない可能性があります」などと表示が出る。純正品ではないのだから、「使用できない可能性」は、もちろんこちらも了解している。なので、面倒くさがらずに、少し値が張るとしても、純正品を買うに限るのだ。この件については、解決策はすでに出ている。

しかし、僕が一番モヤモヤするのは、純正品でないケーブルがある日、突然充電できなくなる現象ではなく、逆にむしろなぜ初めだけは充電できるのか、という疑義である。最初から純正品でしか充電できなくしておけば、話は早いではないか。非純正品は、わずかな期間しか使えない。しかし、わずかな期間だけでも使えてしまうから購入し、家に溜まってしまう。

ここまで書いて気づいたのは、乾電池も充電ケーブルも「電気」絡みということである。僕の周囲で、電気が怪しい動きをみせている。電気に翻弄されずに生きていかなければ、いつまでも部屋は片付かないどころか、無駄な出費をこれからも重ねるハメになってしまう。それはわかっているのだが、どうすれば電気に翻弄されずに生きていけるのかまでは、まだわからない。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid