モヤモヤの日々

第54回 「誰かが褒めていなければ褒めにくい問題」

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

僕はつい先日、「好きな本をどんどん紹介していきたい」とツイッターに投稿した。投稿した後に気づいたのが、そんなことわざわざ宣言しなくても勝手にやればいいじゃないか、という疑問だ。発表の媒体がなかったとしても、ツイッターなどのSNSがある。だから勝手に投稿すればいいでのである。いったいなんで僕は、こんな当たり前のことを投稿したのだろう。

しかし、よく考えてみると、そこに深いモヤモヤがあるような気もしてくる。僕は、「誰かが褒めていなければ褒めにくい問題」というものがこの世にあると思っている。いや、もしかしたら僕だけなのかもしれない。「お、この作品すごく面白い」と思ったとしても、どこか自分のセンスに自信がない部分があるものだから、「他に誰か褒めてるかな?」なんて検索してみたくなる。僕の思う「センスのいい人」が褒めていれば、「これは間違いない」と安心して紹介できる。僕もそれなりに本を読んでいるほうだとは思う。でも、ついつい他人の評価に依拠したいと思ってしまう弱さがあるのだ。だから、あんな投稿をしたのだろうか。

そんなような気もするし、そんな大それたことではないような気もする。誰がなにを褒めるかなんて、一部に例外はあるものの、自由であるに決まっている。だいいち、仮にそれが世間の評判と違っていたとしても、なんだというのか。もともと僕は愚鈍であり、誰にも期待されていないのが唯一のいいところなのである。なにをそんな自意識過剰に考えているのか。と、納得したのでモヤモヤは晴れたのだが、投稿には「(自分の本もいいと思ってるので紹介します)」という続きがあったことを最後にお伝えしておきたい。好きな本も、自分の本もどんどん紹介していく所存だ。

 

宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid