モヤモヤの日々

第108回 祝日がない月

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

この連載もそろそろネタがなくなってきたのではないかと思うかもしれないが、そんなことはない。自分のスケジュールのすべてが記載され、仮に乗っ取られでもしたらもはや何をどうすればいいのか途方に暮れるしかないほど重宝しているGoogleカレンダーを開いて僕は驚いた。昨日から6月だったのである。もう2021年の半分が終わろうとしている。何というモヤモヤだろうか。

考えてみれば、今まで土日や祝日が関係のある仕事に就いたことがなかった。しかし、「平日、毎日17時公開」のこの連載を開始してからは、社会人になってはじめて曜日の感覚が生活に定着した。僕の人生にとって、とても大きな変化である。だが、月数の感覚はそうではなかったようで、僕は昨日の原稿を、5月に書いているつもりで執筆していたのだった。

さて、そんなことよりも大切なモヤモヤがある。僕の大好きなGoogleカレンダーをチェックしてみたところ、なんと6月には祝日がないのだ。こんなことがあっていいのだろうか。ただでさえ日本人は働きすぎなのだと聞く。雨が多いじめじめした季節なのだし、1年の折り返し地点の月なのだから疲労が溜まっている人も多いはずだ。もちろん僕もそのひとりである。

この連載にとっても、祝日は貴重なひと休憩になる。しかし、今月は祝日がない。だからといって、僕独自の祝日をつくるわけにはいかないから、もうこれは諦めるしかないのだろう。

もしも僕が偉くなったら、6月に祝日をつくることをお約束したい。絶対そんなことはあり得ないと思うけど、この場を借りて一応表明だけはしておく。何かの間違いで僕が偉くなどなってしまったならば、きっと祝日どころの話ではなくなるだろうが。毎日が日曜、というか曜日の感覚を失わないでいられるのかどうかすら怪しい限りである。そんな人が偉くなったとき、いよいよこの国も黄昏を迎える。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid