モヤモヤの日々

第162回 二代目・朝顔観察日記(2)

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

6月18日に発芽した朝顔の鉢が、体調不良に喘いでいるうちに強風で崩壊してしまった。以前、この連載で書いたが、僕は『万葉集』の和歌に出会ってから、ほぼ毎年、朝顔の種を巻いて育てているのである。その朝顔が崩壊してしまった。しかし、読者からのあたたかな励ましと声援もあり、一代目に敬意を払いつつ、もう一度挑戦して「二代目・朝顔観察日記」をつけることにした。季節外れの種まきになり申し訳ないが、僕は2021年夏の東京に、朝顔の花を意地でも咲かせるのだ。ある種の使命のような気持ちが、勝手に芽生えている。

そう決めたのが8月12日で、二代目の種をまいたのが昨日の8月22日だった。なんで10日ほどの期間が空いてしまったのか。季節外れだったからか、よく高速道路のパーキングエリアで売っているような素朴な種はネットショップに少なく、すぐ届く種としてブランド朝顔の「団十郎」を注文した、と8月12日のコラムで書いた。それと同時に配送は遅れるものの普通の素朴な朝顔の種も注文していたのだが、僕はあることに気がついた。今年は鉢が3つもあるのである。ならばもう1種類、朝顔の種をほしくなるのが人情というものだ。

そこで購入したが、「ヘブンリーブルー」という名前の、青い花を咲かせる朝顔である。団十郎とヘブンリーブルーはまもなく配送され、到着した。しかし、名無しの素朴な朝顔は、配送が遅い。別に平等にしたいわけではないが、なんとなく3つとも同時にまいてあげたい。ただでさえ相手はブランド朝顔なのに、素朴な朝顔が仲間外れみたいで可哀想ではないか。そんなこんな考えながら待ったり、到着したのに時間がとれなかったりして、ようやく昨日まいた。

さて、今日は起床して水あげである。品種がわからなくならないために、種が入っていた袋を土にさして目標にした。競い合わそうという気などない。それぞれが、それぞれのスピードで成長すればいいと思う。それを僕は全力で支援する。この2021年夏の東京に、季節外れの朝顔を咲かそうとした人間と、ほかならぬ朝顔たちがいたことを、みなさんに目撃してもらいたい。順調に育てば次回の「二代目・朝顔観察日記」は、「発芽編」になるはずである。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid