モヤモヤの日々

第228回 本の片付けについて(3)

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

もうすぐ11月が終わる。師走が訪れる。大掃除の季節である。そして、僕の部屋は本で溢れかえっている。一度は片付けたつもりだったのだが、大掃除とは関係なく整理しなければならない。

この連載でもたびたび書いているとおり、蔵書の整理にはいつも頭を悩ませている。本棚を増やすスペースがなく、床に積むスタイルもすぐ崩壊するため僕はカラーボックスを購入し、種類ごとに分類して収納することにした。その数42個。素晴らしいアイディアだったものの、今度はカラーボックスで足の踏み場がなくなり、次はコンテナボックスでの収納を試みたのであった。

これで少なくとも一時期は部屋が汚れることはなかった。何度か地震があったけど、僕と違って強固なボディのコンテナボックスはそれにも耐えた。ところが、それからさらに蔵書が増え、コンテナボックスの上に本を積むスタイルになってしまった。かくして今、部屋が超絶に汚いのだ。

もはや日常となったリモートでの打ち合わせや取材は、背景をぼかすという最先端のテクニックを身につけることによって乗り越えていた。しかし、もう限界である。コンテナボックスの上に積んだ本が崩壊し、足の踏み場がなくなっている。新しく購入した本や、献本いただいた本を見つけるのにも一苦労だ。僕は意を決してコンテナボックスを2個、追加で注文した。合計9個。

費用はかかってしまうが、こんなことなら潔くトランクルームを外に借りればよかった。もはや部屋自体がトランクルームとなってしまった。僕はトランクルームで仕事をしている。追加購入した2個のコンテナボックスは、段ボールの箱を開けないまま、1か月以上も僕の部屋にのさばっていた。ついに重い腰を上げ、あらためて本格的に蔵書を整理し始めたのが昨日のことである。

とくに増えたのが、詩歌についての蔵書である。「詩歌(日本、海外を問わない)」というジャンルをつくって収納していたものを、「詩歌(日本)」「詩歌(海外)」とふたつに分類し直す必要があった。中原中也のことをもっと知ろうと、2012年に山口県の中原中也記念館で開催された特別展の図録まで取り寄せてしまったのだ。なんなら中原中也だけでもボックスを1個使ってしまいそうで恐ろしい。

まだまだ「本の片付け」は途上である。今週中にはなんとか終わらせたいと思っている。しかし、また腰を痛めてしまえば、日常が停滞してしまうので塩梅がむずかしい。唯一の慰めは、今回も「駄目貯金」(鞄やポケットなどの中から掘り起こされる小銭)が快調に増えたことであろうか。なぜか500円硬貨が多く、すでに3000円以上は貯まった。駄目さはいつも僕を窮地から救ってくれる。6000円を目指したい。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid