モヤモヤの日々

第123回 本の片付けについて(2)

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

昨年末から続いている部屋の片付けがまだ終わっていない。主に本の片付けなのだが、一応、読書家を名乗っているので何冊あるか数えたことはないものの、ちょっとやそっとでは整理ができる数ではないのだ。妻には2月中に片付けると約束していた。しかし、珍しく集中して舞い込んできた仕事の依頼や、体調不良が重なり、約束を守るどころか部屋はさらに汚くなった。

一念発起というか、しだいに諦めモードが流れてきた我が家の沈んだ雰囲気にいたたまれなくなり、罪悪感に押しつぶされそうになっていた去る3月22日、一度は疲れてベッドに入った僕だったが、突然飛び起きて、何かにとりつかれたかのように一晩中、片付けをした。「日本近代文学」「海外文学」「詩歌」「昭和の日本」「ケア」「犬」と、注文したLサイズのカラーボックスに本を分類する作戦は、それまでもちょこちょこと実行していた。だが、カラーボックスが小さい、というよりも普段思っているよりもずっと本はかさばる事実を忘れていたため、事前に追加注文しておいた。準備だけはできている。あとは、分類を徹夜で済ませば終わるはずだった。

案の定、誤算は生じた。朝までに分類は終わったのだが、決して広くない仕事部屋の床が、42個のカラーボックスで足の踏み場がなくなってしまっていたのである。ここまでが前回のお話

さて、それからどうなったのか。賢明な読者の方ならおわかりだと思うけど、今、僕の仕事部屋は汚さのピークを迎えている。カラーボックスに何度も足を取られ豪快に転び、本は散らかるわ、体は痛めるわ、さらには分類した本を探すたびに、以前と変わらず部屋が散らかった。分類が細か過ぎて(42分類!)、僕の頭では覚えきれなかったのである。仕事部屋は玄関近くにあって、マンションの通路側にある窓枠前のスペースがなぜか広い。しかし、そこにカラーボックスを積むとWi-Fiがつながりにくくなるという予想外、かつ致命的なトラブルも発生した。

僕は考えた。蔵書を売却したり、処分したりする手もあるが、今回は行わない。なぜなら、過去2度の引越しで、ある程度、本を手放しているからだ。今はそれなりに厳選された蔵書になっている。ならば、どうすれば解決するのか。たどりついたのは、大きめのコンテナボックスを買うことだった。分類が細か過ぎたのと、カラーボックスが多いと余計にかさばるというのが、前回の反省から得られた知見である。僕は部屋に置くことができるコンテナボックスの数を計算し、注文した。

結果的に言うと、部屋におけるコンテナボックスの限界は7個である。ちなみに書き忘れたが、僕は漫画も好きなので、本棚は漫画でびっしり埋まってしまっている。そして計画を練りに練った。

《宮崎の本保管計画》
・デスクや窓際前のスペース、本棚の上 ←近々、読む予定のある本を並べる
・ボックス(1)←小説、エッセイ(日本、海外を問わない)
・ボックス(2)←詩歌(日本、海外を問わない)
・ボックス(3)←批評、評論、思想、哲学(日本)
・ボックス(4)←批評、評論、思想、哲学、歴史(海外)
・ボックス(5)←歴史、古典文学(日本)
・ボックス(6)←ノンフィクション、各種専門書(日本、海外を問わない)
・ボックス(7)←上記の分類の中で、1年以内に読む可能性が低い本
・窓際の壁にある大きな引き出し←読み返す可能性は低いが、資料として保管したい本
・カラーボックス6個←長期スパンの仕事で何度も読む専門書など(デスクの下に収納)

計10パターンの分類である。以前と比べて、なんと半減以上している。僕はとても賢い。計画は完璧である。そして現在、この計画をつくったところで止まっており、部屋には42個のカラーボックスに加え、7個のコンテナが積みあがっている。もはやカオスである。カオスティックである。

今週6月25日(金)、「渋谷のラジオ」に出演する。来週7月3日(土)には、赤坂の書店「双子のライオン堂」で開催される読書会に、スペシャルサポーターとして参加する。どちらもリモートで家からつなぐ予定だ。最近ではラジオ番組でも、終わったあとにパソコンの画面に映った出演者の様子を撮影して公開することが多い。はたして僕は間に合うのだろうか。ラジオ出演まで、あと2日。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid