モヤモヤの日々

第149回 ワクチン接種2回目

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

昨日は新型コロナウイルスのワクチン接種(ファイザー社製)の2回目を受けた。時間は14時から。朝早く起き、仕事と歯医者と愛犬ニコルの散歩を済ませて、その時間に備えた。

歯医者と散歩に行って悟ったことがある。この暑さではワクチン接種会場まで徒歩で行くのは無理である、と。1回目の接種の会場を今回は予約できず、少し離れた会場で打つことになっていた。徒歩30分くらい。電車で行くような立地ではなく、タクシーを使うしかない。

休日の昼過ぎの時間はタクシーがなかなかつかまらないので、マンションの前まで迎車をお願いした。2回目の会場は1回目の会場より混んでいて、いろいろな年代の人たちがいた。受け付け、医師による予診が終わり、2回目のワクチンを接種した。前回は赤子(1歳2か月、息子)の寝かしつけで左腕を腕枕に使うという理由から利き手の右腕に打ってもらったが、あまりにも不自由だったため今回は左手に打ってもらった。すまん、赤子。父には寝かしつけ以外にもやることがあるのだ。帰りも山手通りまで出て、タクシーをひろって家に帰った。それでも汗だくだった。

さて、副反応がより高い確率で出るという2回目接種後の体調はどうなのか。昨夜から接種部位が痛みだし、寝る前と、今朝に鎮痛解熱剤を飲んだ以外は本日13時の時点では大きな体調変化はない。しかし、前回は似たような報告をこの連載でした後に、微熱が出て下がらなくなったのだ。今回は副反応が必ず出ると想定していろいろと備えていたので、今のところ拍子抜けといったところだけど、副反応が出ないにこしたことはない。このままなにもなく終わるのだろうか。それとも前回のように、接種2日目から、やれ熱が出た、やれ頭が痛いと騒ぎ立てるのであろうか。妻に、「どっちだと思う?」と訊いてみた。妻は呆れた顔をして、「大騒ぎするに決まっているでしょ」と自信満々に答えた。

それにしても、とりあえずワクチン接種が終わった。2回目のワクチンを接種したとしてもリスクはゼロにならないと言われているが、少しは気持ちの変化はあるだろうか。ひとまず今日は安静にして、副反応が出ないことを願っている。赤子が左腕の接種部位を触ろうと狙っているため気を付けたい。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid

モヤモヤの日々

第148回 ニコルゾーン

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

愛犬ニコル(2歳10か月、ノーフォークテリア )のだらけぶりが止まらない。ニコルは、「睡眠>散歩>食事」の優先順位で生きているように思う。犬としては珍しいだらけぶりである。

とくに暑い季節は、散歩ですぐにバテる。体高が低く、茶色のモジャモジャなので仕方ないのだけど、暑さに弱いのだ。だから、この時期は早朝か夜に散歩してあげなければいけない。それでもすぐにヘタっとなってしまうため、休み休み水を飲ませながら散歩している。たまに保冷剤で首回りを冷やす。それでも散歩がないと不機嫌になるので、注意を払いながら毎日散歩する。

家に戻って来る頃には、海を漂ってしっとりとふやけたヤシの実のようになっている。手と足を拭き、肉球クリームを塗る。なぜか散歩の後は冷たい新鮮な水しか飲まないニコルのために、新しく水を入れ替えてあげる。一生懸命に水を飲んでいる間、保冷剤で首もとを冷やしてあげる。

散歩が終わったら、もうほとんどやる気を示さない。ケージの中やリビングなどにお気に入りのだらけスポットがあって、そこをよたよたと移動しながらこれでもかっていうくらいだらけ倒す。白目をひん剥いて仰向けになり、生物としてのフォルムをぎりぎりなんとか保ちながら寝ている。可愛いからいいのだけど、自然界だったらどうするつもりだったのだろうか。野生として生きるには、だらけた性格をし過ぎている。その弱さが愛おしくて、僕たちは寄り添うように生きている。

一番感心しているのは、僕が「ニコルゾーン」と呼んでいる存在である。ニコルをベッドの上に載せてあげると、とことこと歩いて行って、“そこ”に収まる。まるでニコルが収まるために、あらかじめつくられていたような掛け布団のくぼみにすぽっとハマり、短いため息をついて丸くなる。「ニコルゾーン」はニコルがつくったわけでもなく、僕が御膳立てしたわけでもなく、いつも適当な位置に、適当な大きさで存在している。ニコルより先んじて存在している。仮にニコルが世界に存在していなくても、「ニコルゾーン」は存在するように思える。しかし、「ニコルゾーン」が「ニコルゾーン」たりえるのは、ニコルが存在しているからだ。

あなたの家の掛け布団を観察してみてほしい。くぼみをじっと凝視してみてほしい。くぼみに大きなキャラメルコーンが収まりそうだと思ったら、そこが「ニコルゾーン」である。

 

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宮崎智之1982年生まれ、東京都出身。フリーライター。著書『モヤモヤするあの人 常識と非常識のあいだ』(幻冬舎文庫)、共著『吉田健一ふたたび』(冨山房インターナショナル)など。2020年12月には、新刊『平熱のまま、この世界に熱狂したい「弱さ」を受け入れる日常革命』(幻冬舎)を出版。犬が大好き。
Twitter: @miyazakid