これは本当によろしくないのだが、僕は家賃の振り込みの期日を失念することがたまにある。期日までに振り込まなければ、当然、迷惑がかかる。事務作業が苦手だと言い訳している場合ではない。

振り込みが遅れると、期日の翌日に不動産管理会社の担当Ｅさんから電話がかかってくる。僕は遅れたことを謝罪し、電話を切った直後にスマートフォンを使いネットバンキングにアクセスして、すぐ振り込む。そして、管理会社に電話し、「今、振り込みました」とEさんに平謝りする。

何度か振込の期日を失念して同じやりとりが続いたので、ある時、僕はEさんに「本当に申し訳ないです。ただでさえお忙しいのに、お仕事を増やしてしまっていますよね。来月からは必ず期日までに振り込みます」と強い意志で宣言した。するとＥさんは言った。「いえいえ、大丈夫ですよ。宮崎さんもお忙しいですよね。これからは私が毎月電話しますので、着信があったら振り込んでください。電話に出る必要もありませんし、振り込み完了のご連絡も一切必要ありません」

一度だけ、僕のほうから自動引き落としの打診をして、申込書を送ってもらったことがあった。しかし、どこまでも愚鈍な僕は、その申込書を失くしてしまい、再び送ってもらいたいとＥさんに謝罪した。しかし、その時もＥさんは、「電話をしますので、それから振り込んでもらえれば大丈夫ですよ」と言った。着信があった後に振り込むルールをEさんに提案されて以来、僕はその約束を守り続けている。電話に出ないし、折り返しもしない。すべて指示通りにしている。

今ではEさんが振り込み期日に電話してきているのか、過ぎてから電話してきているのかすらもわからない。振り込み期日がいつなのか忘れてしまったのだ。もう何もかもがわからない。僕が愚かな人間である事実のほかに唯一わかっているのが、Ｅさんは電話をかけるのが好きだということである。今年の４月だっただろうか。別の振り込みをするときにふと思い出し、月の前半に早々と家賃を振り込んだ。その月の後半にはEさんからの着信はなかった。Ｅさんは、悲しんでいただろうか。

今日で６月が終わる。明日で１年の折り返し地点を迎えることになる。１年は365日なのだから、正確に計算すると７月１日ではないのではないかとツッコミを入れる読者は、この連載にはいない。モヤモヤを解消するだけではなく、モヤモヤのままでい続ける耐性をつけることも大切である。

それにしても６月は祝日が１日もなく、大変な思いをした人が多いと思う。「平日、毎日17時公開」のこの連載を執筆している僕も大変だった。7月のカレンダーをチェックしてみたところ、22日（木）が「海の日」、23日（金）が「体育の日」で祝日である。つまり４連休なのだ。

4日も連載を休めてうれしい！ではなく、みなさんに「モヤモヤの日々」をお届けできなくて寂しい。寂しいので、ゆっくり休んで気を紛らわしたいと思う。ゆっくり休めるのはとてもうれしい。とかいって別の仕事が詰まっている可能性もあるが、４日間もうれし寂しい休暇を過ごしたら、僕はどうなってしまうのだろうか。ただでさえ矛盾を解消することなく、そのまま共存させているややこしい性格をしているので、うれし寂しい日々を過ごしているうちに、楽しいつらいとか、面白つまらないとか、元気もりもりもう限界とか、そんな感じの破綻をきたすかもしれない。

ちなみに、23日（金）の「体育の日」は、東京オリンピックの開催式が行われる。なるほど、こちらは祝日としての理屈は破綻していないがモヤモヤはする。モヤモヤ耐性があってもモヤモヤするし、きっとモヤモヤがすっきりすることもない。本当にこのまま開催されるのだろうか。こんなにも開催への実感がないオリンピックは有史以来、珍しいのではないか。祝日のない６月を乗り切ったと思ったら、今度はモヤモヤだらけの祝日がある７月を迎える。

2021年も後半戦に突入する。自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の頭で考え、日々の生活から得たリアリティを自分の言葉で伝えていく。今年の後半戦も、物わかりが悪く頑固なくせに、意志が弱くてすぐへこたれる僕に根気強く付き合っていただきたい。僕は、犬が大好きである。