scrap book スクラップとは、断片、かけら、そして新聞や雑誌の切り抜きのこと。われらが植草甚一さんも、自分の好きなものを集めて、膨大なスクラップ・ブックを作っていた。ここでは、著者の連載から、対談、編集者の雑文など、本になる前の、言葉の数々をスクラップしていこうと思います。(編集部)
モヤモヤの日々

第156回 二代目・朝顔観察日記(1)

浜の真砂は尽きるとも世にモヤモヤの種は尽きまじ。日々の暮らしで生まれるモヤモヤを見つめる夕刊コラム。平日17時、毎日更新。

自分が書いた昨日のコラムを今日読み返していて、しみじみと感じた。そうなんだよな、と。自分のコラムに感心していては世話ないが、腰もまだ少し痛いし、暑いし、朝顔も崩壊するし、いいことがない。はっきりいって人生は辛い。

そうだよ。辛いんだよ。でも辛いからこそ、人生を容易に放り出したりしてはいけないのだ、とも同時に思った。遠藤周作がどこかでそのようなことを言っていた記憶がある。

昨日のコラムを読んでくれた読者の方からも、「夏はまだまだ終わりません!!!」とツイッターでコメントが寄せられた。よし決めた。僕はこの夏、朝顔をきちんと咲かせる。そう、2021年の夏はまだまだ終わらない。やたらと暑い、日本人にとっては忘れ得ないこの2021年の夏に、僕は大輪の朝顔を咲かせるのだ。それがある種の使命のようにも感じられてきた。まさかのシーズン2に突入した朝顔観察日記に今後も乞うご期待である。

ちなみに、タイトルについては迷ったが、僕が無惨にもダメにしてしまった一代目に敬意を払い、「二代目・朝顔観察日記」にしようと思う。これは単なる業務連絡。

さて、そうと決まれば善は急げである。昨日、ネット通販で新しい種を買おうと検索してみたところ、すぐ(翌日、つまり今日)届く商品は、“朝顔『団十郎』種子10粒詰”しかないことがわかった。セール価格で1931円。花色は「えび茶」だそうだ。しぶくて、いかにも高級な感じがする。しかし、さすがにこれは高すぎるのではないかと腰が引けてしまう。

そもそも、「ブランド朝顔」という発想が違うのではないかとも思う。二代目・朝顔観察日記に、団十郎? 二代目・団十郎? ではない。当たり前ではないか。僕はなにを書いているのだろうか。もう熱はないと思うのだが、自分が少し不安である。そうではなくて、朝顔観察日記に、ブランド朝顔はどうなのかということだ。端的に言って鼻につく。どこかのパーキングエリアで買ってきたみたいな、あの素朴で実直な一代目の魂はどこに行ったというのか。

とはいってもブランド朝顔だけになるのが不味いだけであり、ブランド朝顔が混じっているのはまったく問題ないと思ったので、とりあえず団十郎を注文した。本日中には届くと思う。普通の質実剛健な種は、なぜか配送まで時間がかかってしまうので、待つ必要がある。

だから、今週末は団十郎の種を植えていると思う。がんばれ団十郎。きれいな花を咲かせるのだ。


※8月13日(金)はお盆休みをいただきます。次回の更新は8月16日(月)です。

 

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    長野生まれ。個人的な体験と政治的な問題を交差させ、あらゆるクィアネスを少しずつでも掬い上げ提示できる表現をすることをモットーに、イラストレーター、コミック作家として活動しつつ、エッセイなどのテキスト作品や、それらをまとめたジン(zine,個人出版物)の創作を行う。